虹のきれはし

基本情報

「ザ・ロイヤルファミリー」は、早見和真作の、競馬を題材にした小説です。
父を亡くした税理士の主人公が、ビギナーズラックで馬券を当てたことをきっかけに、人材派遣会社の社長の秘書になります。
社長は馬主でもあり、なので主人公も競馬の世界にかかわることになっていく……みたいな感じのあらすじです。
詳しく知りたい方はググってください。

読みやすさについて

文体がですます系なのもあって、柔らかい口当たりで読みやすい印象です。
単語自体が特別易しいというわけではないですが、あまり小説を読まない人間でも馴染みやすかったです。
ただ、競馬関連のことを何も知らないと情景のイメージがしづらいところもあるかもしれません。
私はゲームの「ソリティ馬」や「ウマ娘」を少し遊んだことがあるし、帯広のばんえい競馬に行ったこともあるのでなんとかなりました。
一応「競馬は知らないけど面白かった」というレビューもそこそこ見かけます。

ドラマ版について

日曜劇場でドラマもやっているみたいだけど、自分の中のイメージが歪みそうだから結局見ないことにしました。
ストーリーも結構違うようで、序盤の数分だけ見ただけでちょっと混乱しました。
なのでこの記事ではドラマ情報はノータッチです。ご了承ください。

感想

とても面白かったです!
2回に分け、2日間で一気に読みました。引き込まれるものがありました。

ここから詳しい感想に入ります。
ネタバレ注意です。読む方は下にスクロール。 まず、これは非常に私的でどうでもいい感想なのですが……。
この間まで、私は「遊戯王ZEXAL」というアニメに熱中していました。
これはカードゲームアニメなのですが、主人公の切り札の名前が「希望皇ホープ」なのです。
だからホープと名の付く馬が主役で活躍したことに謎のうれしさがありました。
人に「ビッグホープも出てくるよ」と言われて、それは流石に冗談だと思って流したのですが、本当に出てきた時は笑ってしまいました。

名前といえば「ロイヤルファミリー」という馬が出てきたときのタイトル回収も熱かったですね。
それより前で皮肉的に一度作中に出てくるので、もう一回拾うのか!という驚きがありました。

盛り上がるところできちんと盛り上がり、起伏があるので読んでいて楽しいです。
第一部 希望・五月で描かれるダービーや、第二部のラストのレースあたりが特に熱くなりました。
第二部 家族・冬での有馬記念を勝てなかったのにはびっくりしました。最後だから気持ちよく終わるかと思っていたのに。
でもスッキリとした終わり方でした。
どこかの作劇論のサイトで、「ストーリーは二つの要素を貼り合わせて作る。主要な出来事を扱う表と、精神的な出来事を扱い、間違いが正されていく裏。そして、裏のストーリーが達成されることが大事で、無理に表のストーリーでハッピーエンドを得る必要がない」とのような論を見たことがあります。
この理論で言えば、有馬記念で勝つか勝たないかより耕一の心の方がより大事なもので、ああいう描き方がその心の変化をより劇的に描けるということなのだと思います。納得。

……でも実際には負けるだけじゃ終わりませんでした。
最後の一文と、次のページに載せられたロイヤルファミリーのプロフィール、その競走成績の下の方を見て、報われた気持ちがありました。
無粋に語りすぎることのない、いい余韻を感じられました。

レース以外のシーンももちろん面白いです。
個人的には、社長と椎名氏がご飯食べてるシーン(259ページあたりから)が好き。
私が椎名氏に抱いていた「何考えてるかわからない不気味なライバル……?いやライバルにしてはこちら側が足元にも及んでない気もするけど……」という漠然とした印象が一気に変わったところがよかったです。
でも、もちろんそれ以外のキャラクターも魅力的。人気の小説なので、その辺は当たり前といえば当たり前かもしれません。
社長(山王耕造)のことが好きになってしまう。こういう周囲に悪印象持たれてそうなキャラに対して「俺だけは良さわかってるから」面するのが楽しいです。
実際には私だけではないのですが。

「裏切るな」と提示されたら、いつか主人公がやむに止まれず裏切る場面が出てくるのか?と不安に思っていたのだけど、最後までそんなことはなくてほっとしました。
「どっかの国の執事みたい」と序盤で名前について言われてたけど、本当にイメージがそんな感じ。

本当に面白かったです。ぜひ他の人にも読んでほしい。

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